食事がおいしく感じられないとき|味覚の変化と、食べやすくする工夫

「最近、食事がおいしく感じられない」「料理の味付けが、うまくできなくなった」。そんな変化を感じることはありませんか。

味の感じ方が変わると、知らないうちに塩分や糖分をとりすぎたり、食欲が落ちて栄養が足りなくなったりすることがあります。この回では、味の感じ方が変わる理由と、感じ方のタイプ別にできる工夫を紹介します。

※本記事は、医学博士の廣瀬まゆみ先生が別の媒体で連載されていたコラムを、わんまいる公式ブログ向けに編集して掲載しています。

味は、舌だけで感じているのではない

味には「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」の5つの基本の味があります。食べ物の味は、このどれか、あるいは組み合わせとして感じられます。

味を感じとっているのは、舌の表面や口の中の粘膜にある味蕾(みらい)という部分です。唾液に溶け出した味の成分が味蕾を刺激し、その信号が脳に伝わることで、私たちは味を感じています。

ただし、「おいしい」と感じるとき、働いているのは味覚だけではありません。見た目や形、色、香り、食感、温度、そして過去に食べた記憶までが影響しています。味そのものが変わらなくても、これらが変わればおいしさは変わる、ということです。

味の感じ方が変わる理由

味の感じ方が変わる要因は、ひとつではありません。

  • 加齢(味蕾は年齢とともに減るといわれています)
  • 服用している薬の影響
  • 口の中の乾燥
  • 亜鉛や鉄など、微量の栄養素の不足
  • 口の中の荒れや炎症
  • 神経の障害
  • 緊張や不安といった心理的なもの

なお、加齢による味覚の変化は、聴力の低下に比べると自覚される割合がかなり少ないとされています。本人が気づかないまま進むことがある、ということです。

気になるときは、自己判断せず、医師や薬剤師にご相談ください。薬の影響や栄養状態が関わっている場合があります。

感じ方のタイプ別、食事の工夫

ここからが本題です。味の感じ方は人によって違うので、工夫も分けて考えます。

「本来の味と違って感じる」とき

違和感のある味を避け、いろいろな味付けを試してみましょう。塩味や醤油を苦く感じる場合は控えて、甘味や酸味を使います。うま味や香りを加えるのも有効です。肉や魚は、アク抜きや臭み抜きをしておきます。

  • 焼き魚… 塩と酒で臭みを除き、生姜などで風味を足す。調味料は食べるときに好みの味を選べるようにする
  • 野菜… 醤油、ぽん酢、マヨネーズなど好みの味を選べるように。ミルク煮にしてまろやかにする
  • みそ汁… だしを濃いめにとる。みょうが、三つ葉、ねぎ、生姜などで香りを足す

「味を強く感じる」とき

強く感じる味の調味料や素材を避け、別の味付けを中心にします。食べるときに自分で味を足せるようにしておくと安心です。

  • 焼き魚… 塩と酒で臭みを抜き、味付けせずに焼く。レモンやかぼすを添えて酸味を使う
  • 野菜… だし醤油はかけずに添える。かつお節、ごま、刻みのりで風味を足す
  • みそ汁… 味は薄めに、だしを濃く。ポタージュなど、塩味が薄くてもおいしい料理に

「味を感じにくい」とき

味付けをはっきりさせ、香りやうま味で深みを加えます。料理の温度を人肌程度にするのもひとつの方法です。

  • ごはん… 梅干し、ふりかけ、佃煮などを添える
  • 焼き魚… あんをかけて味をまとわりつかせる。カレー粉などの香辛料や、マヨネーズのようなコクのあるものを使う
  • 野菜… ごまだれ、白和えなどコクのある味に。だしやレモンでうま味と風味を足す
  • みそ汁… だしを濃く、味噌の量は好みで調節。ごぼうやきのこなど、うま味の出る食材を使う

「食感が変わった」とき

食べ物が乾いて感じるときは、口の中が乾いていることがあります。飲み物をひと口含む、あんかけ料理や汁物と一緒に食べるなど、水分を補ってなめらかにすると食べやすくなります。

亜鉛を多く含む食品

亜鉛は、体の中のさまざまな働きに関わる必須の微量元素です。不足が味覚の変化に関わることがあるとされています。

多く含む食品には、次のようなものがあります。

  • 抹茶、緑茶の煎茶(一番茶)、玄米茶、ココア
  • 牡蠣、数の子、煮干し、あまのり、てんぐさ寒天
  • きな粉、カシューナッツ、いりアーモンド、いりごま、麩

いつもの食事に少し取り入れてみる、という程度で構いません。

まずいと感じるものは、無理に食べない

味の変化を感じるときに大切なのは、次の2つです。

  • まずく感じる味の食べ物は、避けること
  • 「比較的食べられるもの」の味や特徴を知り、おいしさの要素を積極的に取り入れること

見た目、香り、食感、温度。味そのもの以外にも、おいしさをつくる要素はたくさんあります。そこを手がかりにすれば、食べられるものは広がります。

毎日の献立づくりの参考に、当ブログの献立紹介もどうぞ。

この連載について

医学博士の廣瀬まゆみ先生が、季節の食材や食の工夫について書いたコラムをお届けします。

廣瀬まゆみ先生の紹介はこちら

よくある質問

Q. 食事がおいしく感じられないのは、年齢のせいですか?

加齢も要因のひとつですが、薬の影響、口の乾燥、亜鉛などの不足、心理的な要因など、ほかにもさまざまな要因があります。気になるときは医師や薬剤師にご相談ください。

Q. 味が薄く感じるとき、塩を足してもいいですか?

塩を足す前に、だしを濃くする、香辛料や香味野菜を使う、コクのある味にするといった方法があります。塩分のとりすぎを防ぎながら、満足感を得やすくなります。

Q. 亜鉛はどんな食品に多いですか?

牡蠣、数の子、煮干し、きな粉、ナッツ類、ごま、麩、抹茶や煎茶などに多く含まれます。

出典

  • 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」(亜鉛を多く含む食品)

※記載内容は記事掲載時点の情報です(本記事の最終確認:2026年10月)。体調や症状が気になる場合は、医療機関にご相談ください。