ファイトケミカルスープは、植物や野菜などに含まれる「ファイトケミカル」という成分を効率よく摂ることができるスープです。
ファイトケミカルスープは、「ガンと免疫」「食事の関係」などを研究し、ファイトケミカルに関連する著書を多く出版されている麻布医院院長の高橋弘先生(ハーバード大学で免疫栄養学を研究)が提唱したスープです。
「ハーバード大学式野菜スープ」とも呼ばれ話題となり、現在はファイトケミカルスープとしても広く知られるようになりました。
この記事では健康に嬉しいファイトケミカルスープの基本的な作り方・レシピ、効能や効果を高める飲み方、ファイトケミカルが豊富な野菜の種類を解説しています。
ファイトケミカルスープとは?

ファイトケミカルスープは健康や医療の分野でも注目のファイトケミカルを効率良く、しかもその働きをフルに活用して摂取することを考えられた調理方法の一つです。
ファイトケミカルスープの効果・効能とは?
ファイトケミカルスープは
- 血管や皮膚、細胞など体を老化させる酸化力が高い活性酸素を除去する抗酸化作用
- 免疫力を高める免疫増強作用や抗がん作用、アレルギーやアトピーを防ぐ
といった働きが期待できると言われているファイトケミカルを摂ることができます。
「ハーバード大学式野菜スープ」として提唱した高橋弘が院長を務める麻布医院のホームページでは、
免疫力を高めて抗がん作用抗がん剤の副作用などで白血球が減少している患者さんに2週間、毎日、200ミリリットルずつ、一日三回飲んでもらったところ、平均で白血球が143%、好中球が170%、単球が163%、リンパ球も125%まで増加しました。そして、かぜを引かなくなる、抵抗力がついたなどの効果が出ています。
といった効果が確認されたようです。
特に酸化から細胞を守る抗酸化作用は私達人間にとっても重要です。
人は呼吸で酸素を取り入れ、各機能を働かせるエネルギーとしています。
ですが、この酸素のうち約2%ほどは、酸化力の高い活性酸素に変わってしまいます。活性酸素は外部からの細胞へのダメージから守る殺菌などの働きなどがあり必要なものです。
ただし、加齢、生活習慣(睡眠不足やストレスなど)や食生活の乱れ、紫外線の影響で増加してしまうと、活性酸素の酸化力が細胞を酸化(サビ)させてしまい、これによって老化や病気の原因になってしまう可能性が高まると言われています。
肌の衰え、たるみやしわなども細胞が衰えてくることで見た目にも現れてくるので、酸化を防ぐ抗酸化力は若々しくいるために重要な存在となっています。
さらにスープとして飲むことで
- 野菜不足解消
- 調理の過程で失われやすい野菜の栄養が摂れる
- 温かいスープは代謝アップや冷え対策やリラックス効果も
- 食物繊維を摂ることによるお通じの改善、糖や脂肪の吸収を抑える働き
- ダイエット中に低カロリー、低糖質でお腹を満たせる
- 調味料の使用も控えめなので、塩分制限になる
- お子さんも安心して飲める
- 作り置きできるので育児・共働き家庭にもおすすめ
といったメリットもあります。
ファイトケミカルスープを飲むメリットは抗酸化力の高いファイトケミカルの成分やビタミン、ミネラル、食物繊維が手軽に摂れるという点以外にこんなおすすめポイントがあります!
- 誰でも簡単に作れる
- 食材が身近で手に入れやすくコストが安い
- お好みでレシピをアレンジできるから続けやすい
- 冷やして飲んでも良いので夏の冷製スープとしておすすめ
- 冷凍保存で作り置きができる
ファイトケミカルの特徴

ファイトケミカル(ファイトケミカルス)は植物が元々持っている化学成分でポリフェノールやカロテノイドなど、植物自身が外敵などから身を守るために備えていると言われており、高い抗酸化作用が有名です。
これらは私達人間にとっても重要な役割を果たすと考えられています。
近年では炭水化物・タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルといった5大栄養素についで、第6の栄養素として評価されている食物繊維と共に有用な成分として第7の栄養素と評価する声も!
- 名称:ファイトケミカル=phyto(ギリシャ語で植物の意味)chemical(化学成分という意味)
- 植物の皮や種に含まれる植物性化学物質
- 外敵や紫外線、雨などから身を守るための自己防衛成分
- 植物の苦味や渋み、辛味、色素の成分
- 強い抗酸化作用を持ち抗がん作用など人間にとっても有用な働きが期待できるとして研究が進んでいる
- 自然界では発見されているだけで5000種類以上存在
主なファイトケミカルの種類

ファイトケミカルの種類は自然界でも膨大な数があり多種多様です。
強い抗酸化作用や抗がん作用、動脈硬化予防や解毒作用、免疫力アップ、アレルギーの抑制といった医療分野でも注目される種類も存在しています。
ファイトケミカルは主に
- ポリフェノール
- カロテノイド類
- 含硫化合物
- 糖関連物質
- アミノ酸関連物質
- 香気成分
といった6つに分類されています。
ポリフェノール
ファイトケミカルの中でも有名なのが抗酸化作用を持つポリフェノール。
ポリフェノールにはフラボノイド、フェニルプロパノイド、シゲトン類があり、主にフラボノイド系と非フラボノイド系でも分類されます。
ポリフェノールだけでも種類が豊富で、様々な食品に含まれています。
フラボノイド系の主なポリフェノールがこちら
アントシアニン | ブルーベリー、ビルベリー、アサイー、赤ワイン、カシス、イチゴ、ナス、赤ジソ、黒豆、黒ゴマなど |
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プロアントシアニジン | クランベリー、アカシア、ブドウ種子など |
イソフラボン | 大豆 |
アピイン | セロリ、パセリ |
ルテオリン | ピーマン、セロリ、パセリ、ブロッコリー、ニンジンなど |
ノビレチン | シークヮーサー |
ルチン | そば、玉ねぎなど |
ケルセチン | たまねぎ、りんご、エシャロット、サニーレタス、ブロッコリー、モロヘイヤ |
ケンペロール | ブロッコリー、お茶、グレープフルーツ、キャベツ、ケールなど |
ミリセチン | ぶどう、ベリー系、お茶、ワインなど |
フィセチン | イチゴ |
カテキン・エピカテキン・エピガロカテキン | 緑茶などのお茶類 |
テアフラビン・テアルビジン | 紅茶 |
ナリンギン | グレープフルーツ、はっさくなど |
非フラボノイド系のポリフェノールがこちら
クロロゲン酸・フェルラ酸 | コーヒーなど |
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ロズマリン酸 | レモンバーム、スペアミント、シソなど |
リグナン・セサミノール・セサミン・セサモリン | ゴマなど |
レスベラトロール | 赤ワイン、ブドウの皮、ピーナツ、ココア、リンゴベリーなど |
ジンゲロール・ショウガオール | 生姜 |
クルクミン | ウコン |
カロテノイド
カロテノイドは脂質関連物質で、にんじんやかぼちゃ、みかん、さらに魚類、海藻などにも含まれます。こちらも抗酸化作用があります。
α-カロテン | にんじん |
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β-カロテン | にんじん、かぼちゃ、ほうれん草、ピーマン、すいか、柑橘類など |
β-クリプトキサンチン | みかん、オレンジ、柿 |
アスタキサンチン | サケ、カニ、エビなど |
カプサンチン | 赤ピーマン、とうがらし |
ルテイン | ほうれん草、ブロッコリー、かぼちゃ、マリーゴールドなど |
ゼアキサンチン | クコの実、トウモロコシ、ホウレンソウ、ケールなど |
フコキサンチン | わかめ、昆布などの海藻類 |
リコピン | トマト、スイカ、柿、あんず、パパイア、マンゴー、金時にんじん |
含硫化合物
含硫黄化合物は辛味や刺激臭が特徴で、これらのファイトケミカルは抗酸化作用の他に、血行や血流の促進、抗菌作用、解毒酵素の活性化などの働きがあると言われています。
主にグルコシノレート類、システインスルホキシド類があります。
スルフォラファン | ブロッコリー、キャベツ、白菜、ケール、菜の花、カリフラワーなど |
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シニグリン | わさび、辛子など |
ワサビイソチアシネート | わさび |
グルコブラシン | 白菜 |
アリイン | ニンニクなど |
イソアリイン | たまねぎ、りんご、ねぎなど |
メチイン | ニラ |
アミノ酸関連物質
アミノ酸関連物質は野菜だけでなく魚介類、動物にも含まれています。
タウリン | 魚介類、イカ、タコなど |
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グルタチオン | レバー、アスパラガスなど |
糖関連化合物
植物や菌類、細菌などに含まれるβ-グルカンや海藻などに含まれるフコダインなど免疫力アップや抗がん作用が期待できるとされているファイトケミカルです。
β-グルカン | きのこ類、大麦、酵母、オーツ麦などの穀類 |
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フコダイン | ガゴメ昆布、メカブ、オキナワモズクなど |
ペクチン | にんじん、パプリカ、なすび、キャベツ、大根、りんご、みかん、柿など |
香気成分
食品に含まれている香りを持つ揮発性物質です。殺菌や抗菌、消炎などの働きがあると言われています。
オイゲノール | バナナ、クローブオイルなど |
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リモネン | みかんなどの柑橘類 |
ファイトケミカルが豊富な野菜・食品は?
ファイトケミカルは基本的にどの野菜を選んでも含まれていますが、中にはファイトケミカルが豊富な野菜があります。
ファイトケミカルが多い野菜や食品の指標は「DPPHラジカル消去活性」と呼ばれる抗酸化力を表す指標などで評価されています。
- 野菜・根菜など:ジャガイモ・玉ねぎ・モロヘイヤ・キャベツ・セロリ・ニンジン・生姜・ニンニク・ナス・トマト・ピーマン・ブロッコリー・カリフラワー・芽キャベツ・ターメリック・バジル・キュウリなど
- 果実:オレンジ・レモン・グレープフルーツ・メロン・ブルーベリー・アサイーなど
- 豆類:大豆など
- 穀類:玄米・全粒小麦・燕麦・大麦など
- その他:甘草・茶・タラゴン・ハッカ・オレガノ・タイム・ローズマリー・アサツキ・セージなど
ファイトケミカルは主に色素である色が濃い野菜や苦味や渋みといった独特な風味や香りを持つものに多いです。
ファイトケミカルスープの基本的な作り方・レシピ

ファイトケミカルスープ(ハーバード大学式野菜スープ)のレシピをご紹介します。
- 玉ねぎ:100g
- キャベツ:100g
- ニンジン:100g
- かぼちゃ:100g
- 水:1,000ml
- 材料を食べやすい大きさにカット(たまねぎは切ってから15分ほど置く・キャベツは芯を取り除く・人参・かぼちゃは皮付きのままがおすすめ)
- 鍋に切ったキャベツ、かぼちゃ、たまねぎ、ニンジンの順に下から重ねるように入れる
- 調味料は加えない
- 水1,000mlを加え蓋をして強火で加熱
- 沸騰するまで加熱したら弱火で30分ほど煮込んで完成
調理のポイント

作り方自体は簡単なファイトケミカルスープですが、素材の特徴を理解するとさらにファイトケミカルのパワーを最大化して摂取することができます。
切った野菜を水にさらさない
野菜に含まれる成分は水溶性ビタミンなど水にさらすと流れ出てしまうため、切った後は水に浸けておいたり、流水にさらしておくのは避けるのが良いでしょう。
玉ねぎはカット後15分ほどおいて加熱
たまねぎの成分には切った箇所が空気に触れることで熱に強くなるという特徴があるため、切ってから15分ほど置いてから加熱するのがおすすめ。
かぼちゃ・人参は皮付きで煮込む
野菜には「皮付近」にも栄養が多く含まれているため、かぼちゃや人参は皮付きで煮込むのがおすすめです。
かぼちゃは種やわた部分も栄養が多いのですが食べるのが難しいため、皮部分は残して煮込むのがおすすめです。

皮部分は汚れや残留農薬など薬品が気になる人もいますよね。
調理の際は流水で30秒〜1分ほど洗ってから調理したり、そもそも無農薬野菜など残留農薬に配慮された野菜を選ぶのが安心です。
美味しさをアップしてくれる重ね煮
重ね煮は野菜などの素材の旨味を最大限に引き出す調理法です。重ね煮で煮込むことで基本味付けをしないファイトケミカルスープの味をアップしてくれます。
- 各食材を層のように重ねて入れる
- 下からきのこ・海藻類→果菜(トマト・なす・豆類など)→葉野菜(キャベツ・小松菜・白菜・長ネギなど)・芋類(じゃがいも・かぼちゃ・里芋・さつまいもなど)→根菜(たまねぎ・人参・大根・ごぼう・れんこんなど)→穀類(お米など)→魚介類→調味料
- 蒸気が逃げないように蓋をする(穴無し)
- 水分少なく材料が焦げ付きそうな場合は水を追加

ファイトケミカルスープの場合はキャベツ→かぼちゃ→たまねぎ→人参の順で重ねるのが良いでしょう!
重ね煮にすると野菜のアクなども旨味になるため、調味料を使わないのが基本のファイトケミカルスープを美味しく飲むポイントとなります。
水を少し入れて蒸し煮にする
野菜と一緒に水を入れて煮込む際、一気に水を入れても良いですが、最初に水を少し入れて蒸し煮にすることで野菜の甘さや旨味がアップします。野菜がしんなりしてきたら、残りの水を加えて煮込みましょう。
琺瑯鍋(ほうろう鍋)で野菜の味を変えずに調理!
ファイトケミカルスープ作りで煮込む時に使う鍋は琺瑯鍋(ほうろう鍋)がおすすめ。
琺瑯鍋は素材が鋳物(いもの)などで鉄製よりも食材の味への影響が少ないと言われていて、熱がじっくりと伝わるため、しっかり煮込むのが重要なファイトケミカルスープにピッタリ。
一度熱が伝わると保温力も高いので、ルクルーゼなどの琺瑯鍋を持っている人は試してみてください!
ファイトケミカルスープのアレンジ

ファイトケミカルスープはたまねぎ、キャベツ、かぼちゃ、人参といった基本の野菜がありますが、アレンジは自由!
アレンジレシピに使いたいおすすめ食材はやはり旬の野菜です。
季節ごとに食べごろの野菜でファイトケミカルを美味しく摂りましょう。
- 春の旬野菜:アスパラガス、グリーンピース、ふき、さやえんどう、菜の花など
- 夏の旬野菜:とうもろこし、きゅうり、ピーマン、パプリカ、モロヘイヤ、さやいんげん、オクラ、枝豆、ゴーヤ、ズッキーニなど
- 秋の旬野菜:さつまいも、ごぼう、大根、白菜、チンゲン菜、ブロッコリー、ほうれん草、みょうが、大葉など
- 冬の旬野菜:ゆり根、クワイ、レンコン、春菊、長芋、芽キャベツなど
他にもしいたけ、まいたけ、エリンギ、海藻や鶏肉などを加えるなどアレンジもお好みでできます。

調味料を使う時は何がおすすめですか?

コンソメ・ブイヨン、塩・コショウや味噌などを加えるなどアレンジもOK!
でも最初はシンプルなファイトケミカルスープを楽しみながらお好みや体調に合わせてアレンジしていくのが良いですね。
ファイトケミカルスープの飲み方

ファイトケミカルスープは調味料を加えず、野菜の旨味を味わいます。飲むときには野菜を除いてスープだけで飲むのが「ハーバード大学式野菜スープ」の飲み方。
また、ダイエット中で食事量を控えている人、糖尿病など血糖値対策が必要な人、お通じのリズムが乱れがちな人は野菜も一緒に摂れば満腹感を得られやすく、食物繊維も摂れるので食べすぎ防止にもなります。
しかも調味料を使わないので、減塩にも役立ちます。

ファイトケミカルスープはどんな味ですか?

味は薄味ですが、野菜の出汁のおかげで優しくて自然な甘さが感じられる味ですよ~!
ファイトケミカルスープを飲むタイミング
スープを飲むおすすめのタイミングは、食前・食間など空腹時に飲むのがおすすめ。
特に朝は胃の中が空っぽなのでファイトケミカルや栄養を吸収しやすくおすすめのタイミングです。
ファイトケミカルスープの摂取量
ファイトケミカルスープは毎日飲むのがおすすめされていますが、1日の摂取量は1回200mlほどを目安にしながら目的に合わせて飲む回数を増やしていくのが良いでしょう。
- 健康維持目的:1日1~2回、朝・夜
- ダイエットや生活習慣対策:1日2~3回
- 免疫力を高めたい人:1日3回、各食前

基本的には1日1回、もしくは朝と夕食時に飲むのが無理なく続けやすい摂り方ですね。
ファイトケミカルスープで健康で若さを保ちましょう!
ファイトケミカルスープの作り方や特徴についてご紹介しました。
ファイトケミカルスープはコストもかからず、身近な食材で作れるのでとっても手軽です。
- ファイトケミカルが手軽に摂れる
- 野菜は皮ごと煮込むのがおすすめ
- 味付け次第で減塩やカロリー・糖質コントロールもできる
- お好みのアレンジで毎日続けると尚良い
- 冷凍保存が可能
料理が苦手、調理する時間が取れない人は市販・通販のヘルシーな野菜のスープから始めるのもおすすめ!
宅配食サービスのナッシュが以前提供していたスープは野菜たっぷりでファイトケミカルもしっかり摂れるヘルシーなスープでした。
現在は販売終了してしまいましたが、スープを販売している宅配食サービスは他にもあります。
宅配食のスープなら栄養学のプロである管理栄養士が監修したスープが手軽に飲めるのが便利です。


ファイトケミカルスープで病気や老化から体を守る健康的な食生活を始めましょう!
また、ファイトケミカルスープ作りにおすすめの食材を扱う宅配サービスもチェックしてみてくださいね。
