嚥下食とは噛む力や飲み込む力が衰えた高齢者や要介護者のために食材をやわらかく処理したり、ムース状にした食べやすさに配慮した食事です。
下ごしらえから、嚥下食用のとろみ剤・ゲル化剤などを使用するなど嚥下食に適した調理を行う必要があり、普通の食事作りと比べると一手間も二手間も必要です。
「やわらかい食事」を用意するとなると、家族の中の一人分だけだとしても食事作りが負担は2倍。
しかも、その家族の栄養バランスを毎日考え、食材をバランス良く献立に組み込むのも大変です。さらに、飽きさせないように毎日の献立を考えるとなるともう大変。
その労力は相当なものです。
この記事では、介護食として便利な「やわらか食・嚥下食」を通販で買えるサービスをご紹介。
どのサービスを選んだら良いか悩んでいる方におすすめしたい宅配食を取り上げていきます。
嚥下食におすすめな通販の宅配食サービス
嚥下食や、やわらかい食事を提供している宅配食サービスをご紹介します。
レトルトタイプの嚥下食は通販でも購入できますが、メニューの数が少ないため食事が似通ってしまいがち。
その点、宅配食なら豊富なメニューで毎食飽きずに食べらるのが魅力です。
【1】やわらかダイニング
「やわらかダイニング」は、ちょっとやわらかめ・かなりやわらかめ・ムース食の3段階のやわらかさから選べるのが便利です。
嚥下食までは必要ないけれど、普通食よりはやわらかい食事が食べたい方などに重宝されています。
おすすめ度 | ★★★★☆ |
1食あたりの価格 | 756円 |
セット数 | 7・14・21食から選択可能 |
セット価格 | ■ちょっとやわらかめ宅配食の値段 7食:5,292円 14食:10,260円 21食:15,012円 ■かなりやわらか宅配食の値段 7食:5,940円 14食:11,124円 21食:16,416円 ■ムースやわらか宅配食の値段 7食:5,940円 14食:11,124円 21食:16,416円 |
1食あたりおかずの数 | 4品 |
配送方法・配送料 | 都度便:770円(税込) 定期便:無料 初回送料 |
配達エリア | 全国 |
販売会社 | 株式会社ウェルネスダイニング |
●定期便なら送料半額
●好みに合わせて3段階のやわらかさからチョイスできる
●嚥下食として作られているわけではありませんが、ムース食はやわらかく飲み込みやすい
●素材の見た目は残しつつ、スプーンや口の中で簡単にすりつぶせるやわらかさ
●噛む力、飲み込む力が弱まってきた人
●価格が安めのやわらか食を探している方
「やわらかダイニング」は高齢者向けのやわらか食宅配サービスの代表格。噛む力・飲み込む力が弱まってきたご高齢者にはもちろん、歯の治療中などで固いものが食べられない時期の食事にもおすすめ。制限食宅配サービスで有名な「ウェルネスダイニング」が運営しているので味やサービスの質も良く、安心して利用できます。
【2】スギサポdeli「咀嚼サポートやわらか食」
薬局チェーンが手掛ける「やわらか食」
スギサポデリの「やわらか食」は、薬局チェーン「スギ薬局」が手掛ける冷凍宅配食です。
やわらかさのレベルは1種類のみですが、数あるやわらか宅配食の中でも「美味しさ・メニューの豊富さナンバーワン」と言っても過言ではありません。
ムース状のやわらかさではなく「普通食よりもちょっとやわらかい」くらいです。
コース一覧・価格
【セット価格】
●やわらか食6食セット 4,082円(税込)・1食単価: 680円(税込)
メニューの傾向が異なる6つのセットから選択できます。
・やわらぎセット(お肉中心のセット)
・ほほえみセット(魚中心のセット)
・ひかりセット(バラエティ豊かなセット)
・あおいセット (中華を含むセット)
・はるかセット (人気メニュー強化セット)
・かがやきセット (食事が楽しくなるメニューセット)
1食単価 | 680円(税込) |
1食あたりおかずの数 | 3品以上 |
温め方法 | 電子レンジ |
賞味期限 | 3ヶ月以上 |
送料 | 全国一律917円 |
配送方法・配送可能エリア | 全国配送可能・ヤマト運輸クール宅急便 |
支払い方法 | クレジットカード(WEB注文の場合)・代金引換 |
●定期便で利用すれば毎回5%割引してくれる
●自分の好みに寄せてメニュー(セット)を選べる
●やわらか食でも色々なメニューを楽しめる
●魚・肉・中華など好みのメニューだけが欲しい方
●とにかく美味しいやわらか食を探している方
60代・女性
とても美味しいです。魚中心の「ほほえみセット」をいつも注文しています。年々、自分で魚を焼くのが面倒になっていましたが、このコースのおかげで魚不足を解消できています。やわらかさもちょうど良く、食べやすいです。
ムース食までには対応してはいない分、評価に減点はありますが「やわらか食」としては最もおすすめ。
美味しさ・コスパの良さ・好みのメニューを選べる自由度などおすすめしたいポイントが多いやわらか宅配食です。
【3】 メディカルフードサービス「やわらか食」
MFSやわらか食の詳細
セット価格
6食セット 5,335円(税込)
1食あたりおかずの数
4品~
温め方法
電子レンジ500Wで4~5分
賞味期限
製造日から起算して90日間
送料
全国一律送料無料
支払い方法
クレジットカード(オンライン注文時のみ)・銀行振込・コンビニ決済・郵便振替・口座引落(要別途申込み)
メディカルフードサービスの「やわらか食」は栄養価の損失が少ない「凍結含浸法(酵素の働きで食物を軟化させる製造技術)」が採用され、歯茎でも潰せる柔らかさを実現しています。
硬めの食材もやわらかく調理されていることで、誤嚥の回避が期待できるお弁当として注目を集めています。
●平日15時までの申込みなら、在庫がある限り当日出荷してくれる
●消費者庁の「食事療法用宅配食品等栄養指針」に基づいていることも安心
40代・男性
歯が弱い高齢の母の食事として利用しました。食べやすさは申し分無いと言ってくれました。塩分が濃いものが好きな母ですが味付けも気に入っています。
噛まなくても口の中ですりつぶして食べられる柔らかさにも関わらず、ムース食などとは違って「食べている実感」が湧きます。
入れ歯などなくても食べられること&飲み込みやすいので、高齢の家族に食べてもらう食事として安心感がありました。 魚のおかずは「骨取り魚」なのも安心。
嚥下食・介護食に宅配食を利用するメリット
嚥下食や柔らかい食事を提供している宅配食の利用は、
- 噛む力に合わせたやわらかさの段階がある
- 管理栄養士による献立監修でバランスの良い食事ができる
- 毎日飽きずに続けられるバラエティーに富んだメニュー
- 温めはレンジで完了するので食事の準備も簡単
- ストック食として活用できる
といったメリットがあります。
食事作りの負担を解消して食べる方の楽しみを損なわず、毎日安心して食べてもらえる料理を手軽に用意できるのが嚥下食の通販で宅配食を利用する魅力となっています。
噛む力・飲み込む力に合わせたやわらかさの段階がある
噛む力や飲み込む力の衰えは人によって様々。
やわらかい食事を提供している宅配食では、
・箸でスッと切れる
・歯茎や舌ですりつぶせる
・噛む必要がないムース状
といった段階に分けられているので、食べる方の「噛む力」や「飲み込む力」に合わせて選ぶことができます。
管理栄養士による献立監修でバランスの良い食事ができる
高齢者の場合、年齢と共に食が細くなる方もいらっしゃいますので、栄養面にも配慮しなくてはいけません。
宅配食サービスは管理栄養士が献立を監修しているため、食べる量が少なくても栄養バランスに配慮した献立が組まれています。
特に高齢者の方が不足しがちなたんぱく質やカルシウム、さらにエネルギーを補う高カロリー食にも配慮して作られているため、自分で嚥下食などの介護食を作るよりもバランスの良い食事が用意できます。
毎日飽きずに続けられるバラエティーに富んだメニュー
嚥下食などのやわらかい食事は下ごしらえに手間がかかる上に献立作りに頭を悩ませる人も多いです。
自分で用意すると、どうしても食事の内容が似てきてしまうこともありますよね。
食べる方も毎日同じようなメニューでは飽きてしまいますし、何より食べる楽しみが減ってしまいます。
その点、宅配食サービスはメニューも豊富で、季節の食材などを取り入れた料理が食べられます。
メニューも20種類以上用意されているのが一般的で、1週間の中でメニューがかぶらないように献立が考えられています。
温めはレンジで完了。食事の準備も簡単
通販の宅配食は冷凍でのお届けが基本で、温めは電子レンジで完了するのが一般的です。
中には湯煎、流水解凍を行う宅配食もありますが、多くが電子レンジのみで食事の準備ができ、ワンプレートの容器におかずがセットされているため、食器に移す必要も無いので食事の準備は簡単で、後片付けの手間も減らせます。
ストック食として活用できる
通販の宅配食は冷凍でのお届けが基本で、賞味期限も3ヶ月以上と長いです。
そのため、あるていどまとめて注文しておき、日々の食事の合間に組み込んで食事作りの負担を軽減するといったストック食としての利用にも便利です。
離れて暮らしていてヘルパーさんが来れない日、もしくはヘルパーさんにお願いする日のみ利用するといった都合に合わせた利用もしやすいです。
まずは知っておきたい「嚥下食のレベル・段階」
まずは嚥下食とはどのようなものかを知っておくことが重要です。
段階 | 名称 | 食品の形態例 | UDFのステージ |
0j | 嚥下訓練食品 | スライス上のゼリー | |
0t | 嚥下訓練食品 | ゼリー | |
1j | 嚥下調整食 | ゼリー・プリン・ムース | UDF区分4(ゼリー状) |
2 | 嚥下調整食 | ミキサー食、ピューレ食、ペースト食(2-1:滑らかで均質、2-2:粒を含む不均質) | UDF区分4 |
3 | 嚥下調整食 | やわらか食、ソフト食 | UDF区分3 |
4 | 嚥下調整食 | 全粥、軟飯、軟菜食 | UDF区分2およびUDF区分1の一部 |
この表から読み取れるように、嚥下食といってもこれだけ細かく分類されます。
個人それぞれの状態に合わせて適切なレベルは異なるので、やわらか食・嚥下調整食を選ぶ際には、かかりつけの医師に相談することが重要です。特に超高齢の方の食事選びは慎重に安全第一が必須です。
通販で購入できる宅配食タイプの「やわらか食・ソフト食」は多くの場合、UDF(ユニバーサルデザインフード)区分の3に相当し、嚥下調整食に分類されます。
ただし、すべてのやわらか食がUDFの指標に基づいて作られているわけではありません。
UDFの規格に基づいているものにはUDFマークが掲載されているのでチェックしておきましょう。
嚥下食の段階基準
ご家庭で嚥下食を用意する場合、嚥下食の段階ごとの物性基準を理解しておく必要があります。
嚥下食は摂食、嚥下障がい者を対象とした食事で、食べ物の硬さ、形を摂食・嚥下能力の評価レベルに応じた嚥下訓練食、嚥下食、介護食の3つに分類されています。
2002年に日本介護食品協議会がユニバーサルデザインフードを作成、介護食の区分表として1〜4に分類した物性の規格が発表されています。
日本介護食品協議会による嚥下食の段階ごとの物性規格がこちら
I 容易に噛める | II はぐきで潰せる | III 舌ですりつぶせる | IV 噛まずに食べられる | |
---|---|---|---|---|
噛む力の目安 | 硬いもの、大きい物がやや食べづらい人 | 硬いものや大きいものが食べられない人 | 細かくてやわらかいものなら食べられる人 | 固形物を食べるのが困難な人 |
飲み込む力の目安 | 普通に飲み込める | ものによって飲み込みづらいものがある | 水やお茶が飲み込みづらいことがある | 水やお茶がのみこみづらい |
上記のような段階に分類されています。
参考:日本介護食品協議会HP
近年では普通食から嚥下食までを6段階に分類した嚥下食ピラミッド(嚥下訓練食レベル0~2・レベル3嚥下食・レベル4介護食・レベル5普通食)として段階に応じた条件が基準化、安全性と品質を保つ取り組みが行われています。
表現としてやわらか食、ミキサー食などと表現されることがありますが、これらも噛む力や飲み込む力に応じた段階に合わせて選ばれています。
古くは厚生労働省による特別用途食品の中の高齢者用食品の基準である「そしゃく困難者用食品の許可基準」と「そしゃく・えん下困難者用食品の許可基準」もあります。
介護食の作り方の基本
嚥下食や介護食は作る側も戸惑うことも多いですよね。
介護食や嚥下食の作り方について、実際に介護福祉士として働く家族に話を聞いてきました。
介護食作りは、
- 下ごしらえ
- 加熱調理で工夫
- 食べやすくするための調理
- 市販アイテムや調理器具を活用
という点を抑えるのが基本となります。
下ごしらえ
下ごしらえは食材の大きさ、切り方を調整する必要があります。
特に硬さがある野菜や繊維が多い根菜、筋などがある肉類は筋を切って細かくする、叩いて柔らかくするなどの下処理がポイントです。
魚は骨が残らないように取り除きましょう。
加熱調理で工夫
加熱調理は食材を柔らかくするといった面だけでなく、食材の栄養を逃さないように配慮する必要があります。
特に野菜に含まれるビタミンは水溶性なので、調理の過程で失われやすく熱にも弱いです。
そのため、野菜を切る前に茹でる、レンジで短時間の加熱などで対応するのがおすすめだそうです。
加熱後は食材の硬さに応じてすりおろす、潰す、煮るといった方法で食材を食べやすくしていきます。イモ類などはすりおろしたり潰しても水分が少ないため注意しましょう。
- すりおろすのがおすすめな食材:果物やイモ類、かみづらい野菜など
- すりつぶすのがおすすめな食材:豆類・イモ類など
- 煮る・蒸すのがおすすめな食材:肉類・イモ類など
魚は焼いた時に油が落ちてパサついてしまうことがあるため、加熱後はとろみ剤などを使ってあんかけなどにするのが良く、肉類はミキサーなどでペースト状にしてから形を整えると食べやすくなります。
- ひき肉や卵焼きなどは細かくまとまりが無いため誤嚥につながるため注意
- こんにゃくや高野豆腐など弾力があるものは噛みにくいため柔らかく調理された市販品を選ぶ
- ごまやナッツ類はペーストで摂る
- 海苔やわかめは口の中や喉に張り付く可能性があるため、細かくする
嚥下食を作る時の市販アイテム
嚥下食を作る場合には舌ですりつぶせるやわらかさやムースのような飲み込むだけで済ませられる調理が必要となります。
人によっては食材を細かく刻んでも飲み込みにくかったり、気管などにつまらせてしまうといった危険性もあるため、市販の嚥下食を作るためのアイテムを活用することも多いです。
調理の際に使われる主なアイテムには、
- とろみ剤:液状のものにとろみをつける
- ゲル化剤:液状のものをゼラチンのように固めて食べやすくする
- 高カロリーゼリー:ゼリー状で飲み込みやすく食が細くなった人のエネルギー補給をサポート
などがあります。他にも食事だけで不足しがちな栄養を補うための栄養補助食品を活用される方が多いです。
とろみ剤やゲル化剤といった増粘剤を選ぶ時には混ぜた時にだまにならず、味の変化やベタつきがないことで食べた時の飲み込みやすさや誤嚥を防ぐことができます。
市販のとろみ剤にはどんな種類があるの?
市販のとろみ剤(とろみ調整食品)には、
- 1回使い切りの分包タイプ
- 1kg未満の中容量タイプ
- 1kg以上の大容量タイプ
以上があります。
とろみ剤には、
- デンプン系:とろみが付きやすいが風味が変わることがある
- グアガム系:少しの量でとろみがつくが、時間と共に形状に変化がおきやすい
- キサンタンガム系:風味に影響が少なく透明感が保てる・時間による変化が少ない
の3種類があります。
ソフティア・ネオハイトロミール・ハイトロミール・トロミスマイル・スルーキングi・スルーソフト・つるりんこ・トロメリン顆粒・トロメリンEX・トロミアップパーフェクト・トロミアップエース・トロメイクSP・トロミクリア・トロメリンV・トロメイククリアなど
ゲル化剤を使った嚥下食レシピ
やわらかい鮭の照り焼き
鮭をペースト状にした後にゲル化剤を加えて焼き、とろみのあるタレをかけた嚥下食の定番レシピです。
- 焼き鮭:切り身
- 出し汁:切り身の大きさの半分くらいの量
- ゲル化剤:0.5gほど材料の約1%が目安
- とろみ剤:タレに対して1対1
- 醤油:大さじ1
- 酒:大さじ1
- みりん:大さじ1
- 砂糖:小さじ1
- 焼いた鮭と出し汁をミキサーに入れてペーストにする
- ペースト状になったら鍋に移してゲル化剤を加えて沸騰するまで加熱(85〜90度以上)
- お皿の上にラップをひき、その上にペーストをあける
- 形を整えて冷蔵庫で冷やして固める
- 固まった鮭を好みの大きさにカット
- フライパンで焼き目をつける
- 醤油、酒、みりん、砂糖を混ぜとろみ剤を加えて加熱
- 鮭にかけて照り焼きの完成
嚥下食を作る時に便利な調理機器
介護食・嚥下食に適した料理アレンジレシピでは野菜や肉、魚を下ごしらえ、調理後にミキサーにゲル化剤を入れてペースト状からゼリー状にするのが基本です。
そのため、介護食や嚥下食を作る際には、
- ミキサー
- フードプロセッサー
- ブリクサー
- ミルサー
- ハンドミキサー
といった食材をペースト状やポタージュなどを作るのが基本です。これらも食べる方の噛む力や飲み込む力に合わせてペースト状にしやすいものを選ぶのが基本です。中でもブリクサーは嚥下食を作るのに適した作りになっていて、水分が少なくてもペースト状にできます。
まとめ
自宅でも安心して食べられる嚥下食をお届けしてくれるのが嚥下食の通販です。
やわらかい食事を提供している宅配食は自身の健康上の理由や年齢による衰えで食べることに対して楽しみが無くなったり、意欲が低下してしまうなど、作る側だけでなく、嚥下食が必要な方にとっても毎日の食事を安心して楽しむことをサポートしてくれます。
- 毎日の嚥下食作りが負担になっている
- 嚥下食が必要な方にも食事を楽しんでほしい
- 栄養バランスの良い食事で元気に居てほしい
そんな方は嚥下食の通販を提供している宅配食サービスを活用してみてはいかがでしょうか。